無窮 i ラボ Blog

知的ネット社会、知そのもの、機械との共生、プログラミングに関して。

 
 

私は、以下の理由により、著作権侵害の非親告罪化に反対します。

理由:

創造的な行為とは、先人が残してくれた流れに何かを追加する行為である。

これは、著作権の侵害行為に似ている。

二次創作が、創造的な行為であるか、(一次)著作者が好まない行為であるかを、第三者が判断しようとすれば誤る蓋然性が高い。

「当事者がかわいそうだ」と言って第三者が怒るが、当事者は不当な扱いを受けたと考えていない事例は、多くある。

著作権侵害の非親告罪化 は、著作者以外の意思により、著作者・二次創作者、及び 著作・二次創作に、規制官憲の方(ほう)から接触することを意味する。

規制官憲の方から接触する場合があることは、著作者・二次創作者共に、個人の創造の発露を曇らせる。これは、社会の創造力を減じめる。創造力は無限ではない、貴重である。そして重要である。創造力を減じめることは避けねばならない。

関連:
図書館戦争ドラマに、人の脳の性質を整理する

なお、図書館戦争以外の話題の際は、仮想の事柄との比較を避けるため、〈レインツリーの国事件〉を 例に挙げるのは避けるべきである。本記事のように、亀田関係者・吉野屋の店員・オウム真理教被害者の事例を挙げるべきだ。
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結論:

社会の改革のためには、個が余裕をもち、その余裕を表現力と創造力に振り向ける必要がある。また、物質化・表現・創造の有機的連携が必要である。物質化は、表現・創造が、思考・思想に留まらないためのひとつの行動として挙げられる。

社会の改革は、「賢者のディスプレー」・「集会装置」・「思考のための食べもの」により、促進される。これらを改良すること、及び、これらの使用を促進することが、社会の改革を促進する。



本文:

(1)
田中 浩也 : SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社, 2014〈底本 講談社現代新書(2014)〉) No.964/2694.

パーソナル・コンピュータを推進してきた研究者の多くは、「個が表現力と創造力を持つことで社会が改革される」ことを強く信じています。ネグロポンテもそのひとりです。

即ち、つながった個が表現力と創造力を持ち、それが臨界点を突破することで社会が改革される。

個が表現力と創造力を持つためには、個に余裕が必要である(参考: 知的ネット社会の設計 #6.拡大知的社会の理解と設計
)。その余裕を、表現力と創造力に振り向ける必要がある (余裕を、従来どおりの生産の拡大には振り向けないという価値判断をする)。

なお、前記引用にはつづきがある:

田中 浩也 : SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社, 2014〈底本 講談社現代新書(2014)〉) No.984/2694.

こうして、「先端技術で社会問題を解決する」という思想的背景をもった活動であっても、完成済みの「コンピュータ」をただ配るだけの支援では限界があることがはっきりしました。重要なのは、現場で、使用者自身が、その場やその人に合うようにテクノロジーを再編集できるための「施設(拠点)」だということがようやく分かったのです。

つまり、表現・創造(ソフトウェア)だけでは不十分であり、物質化(ファブリケーション)(ハードウェア)・表現・創造の有機的連携が必要である。

行動無き思考・思想は無意味だといわれる。物質化は、表現・創造が、思考・思想に留まらないためのひとつの行動として挙げられる。

(2)
田中 浩也 : SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社, 2014〈底本 講談社現代新書(2014)〉) No.156/2694.

素材を変えながら、繰り返し実験をしてみることで、自分自身の発想や想像力が強く刺激されることでした。「つくりながら、かんがえる」「かんがえながら、つくる」という同時性、即興性を実現してくれることで、ワープロや、シンセサイザーといった、人間の知的創造活動のパートナー的存在へと近づいているな、と感じられたのです。

即ち、人間の知的創造活動のパートナーを得る(ことで、社会の改革が促進される)。 ※括弧内は、ブログ記事著者により付記した。

このパートナーにより、知性が湧き上がるように自ら(みずから)により奮起されるのである。

パートナーには、上記引用のように(a)道具もあれば、もちろん(b)人間もある。そして、(c)思考の種になる刺激も必要である。

(a)を「賢者のディスプレー」と表そう。紙のノートや、PCがあたる。

(b)を「集会装置」と表そう。広場や、インターネットがあたる。

(c)は「思考のための食べもの」である。本、雑誌、あらゆるコンテンツがあたる。

これらは、既に存在している。よって、これらを改良すること、及び、これらの使用を促進することが社会の改革を促進する。

昨年、私は、「知的ネット社会の設計 #構成者への情報提供」において

知的ネット社会では、その構成者に、《知性の一般的啓発》・《知的な専門技術》・《思考のための食べもの》が提供される。

と書いた。《知性の一般的啓発》・《知的な専門技術》に関する情報提供として、今回挙げた「賢者のディスプレー」・「集会装置」・「思考のための食べもの」の使用を促進するコンテンツがある。
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2014年 5月13日頃より、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の知財交渉において、著作権保護期間が著作者の死後70年で統一される方向で調整されているとのニュースが報じられています。日本の現行制度では、死後50年です。20年延びると、どうなるのでしょうか。

結論:

著作権保護期間が著作者の死後70年になると、著作物が生まれた背景と評価が添えられないため、良い著作物であっても世代を超えて伝わらなくなる。良い著作物が社会に共有されず、累積性が弱くなるため、人類の向上が遅くなり、人類は失敗しやすくなる。

なぜならば:

著作物、ここでは本だとしましょう。

著作権保護期間が切れた本は、内容を自由に利用できます。本の全文をインターネット上にそっくりそのまま載せても、何ら問題はなく、むしろ著作権法の目的「文化の発展に寄与すること」(第一条)のために推奨される行為です。自由に利用できないために利用されないのでは、「文化の発展に寄与すること」はありませんから。著作権保護期間が切れた本の全文をインターネット上で全文公開しているサイトとして、例えば、青空文庫があります。

著作権保護期間の延長により 自由に利用できるよう、本の内容を提供可能になる時期が 20年変わるだけでしょうか。

いえ、著作権保護期間後の世代が、その本の内容にアクセスしようとする意欲の大小に関わってくるのです。

日本の現行制度である〈著作権保護期間が著作者の死後50年である場合〉(ケース1)と、TPP交渉で挙がっている〈著作者の死後70年である場合〉(ケース2)で比べてみましょう:

共通想定: 本の出版後10年で著作者が死亡する。読者は、本を、出版2年後の22歳の時に読む。

ケース1: 著作権保護期間が著作者の死後50年である場合

本の出版後3年以内にその本を読んだ人が、著作権保護期間が切れたときにも、たいてい心身が健康です。

上記想定では、読者が80歳のときに著作権保護期間が切れます。なお、日本人の2010年における寿命中位数(出生者の半分が達すると期待される年齢)は86歳程度 * でから、半分以上の割合で重度の労働でなければ対応できる程度に心身が健康だと考えられます。

この読者は、本の出版時の背景をよく知っています。どのような背景のなかで本が生まれ、その後の世界がどのようであったかを体験しているため、詳しい評価ができます。この読者は、自由に利用できるようになった本の内容(本の内容が公開されているWebページへのリンク)を、評価を添えて、発信します。

良い評価を添えられた本の内容は、若い世代に利用されるでしょう。本の出版時の背景、その後の長期にわたる体験に基づく評価に、若い世代は大いに惹きつけられ、大きな意欲をもってアクセスします。

その結果、良い評価を添えられた本の内容は、若い世代に伝わり、社会はその内容を共有します。良い内容を、社会が共有するのです。人類は、その内容を階段の材料にして、ひとつ上に昇ります。

過去に発表された人類の生産物により、将来の人類が向上するという、累積性が生まれます。累積性は、万有引力で有名なアイザック・ニュートンの「私がさらに遠くを見ることができたとしたら、それはたんに私が巨人の肩に乗っていたからです」という言葉に表わされるように、その分野の向上の源になる性質です。科学の発展に思いを馳せれば、ご理解いただけると思います。

ケース2: 著作権保護期間が著作者の死後70年である場合

本の出版後3年以内にその本を読んだ人が、著作権保護期間が切れたときにも心身が健康である場合が、極めて稀です。

上記想定では、読者が100歳のときに著作権保護期間が切れます。日本人の2010年出生者が90歳まで達する割合は34%程度、95歳まで達する割合は16%程度 * ですから、105歳程度まで達する割合は極めて少ないと考えられます。

もちろん本の出版後だいぶん経ってから読んだ読者は、年齢が若く、心身が健康です。しかし、そのような読者は、どのような背景のなかで本が生まれたかを知りません。それだけでなく、そのような読者の数そのものが少ないです。

なぜならば、出版後に時期を経た本は、読まれない傾向にあるからです。本とは異なりますが、日本原子力研究所の図書館において複写・貸出がされる雑誌は、最新1年間の号が全体の23%、5年前の1年間に発行された号が全体の4%ほどです (仲本 秀四郎 : 科学技術図書館の現在と未来―日本原子力研究所図書館の現場から (勉誠出版, 2007) p.70.)。つまり 5年間で読まれる頻度は 5分の1以下に落ちています。本についても、程度の差こそあれ、同じ傾向が言えます。

したがって、本の内容がいくら良くても、それを若い世代を惹きつけるような背景や評価を添えて紹介されることは、少ないでしょう。それ故に、インターネット上に全文が載せられていてもアクセスされることは少ないでしょう(そもそも、アクセスが期待されなければ、全文を載せる作業にも困難が伴います)。

【2014/ 5/25 追加。ここから】 著作権保護期間が切れる前であっても、その内容を次の世代に伝える方法があります。“引用”です。

しかし、著作権保護期間が切れる前に著作権法上 認められる引用は、「公正な慣行に合致」し、「引用の目的上正当な範囲内」に限られます。内容の核心は、引用で伝えられますが、それを支える部分は、引用ではまかなえません。「続きはWebで」としたいところですが、著作権保護期間が切れる前には、「続きはWebで」が、できないのです。【2014/ 5/25 追加。ここまで】


ケース1で考えた機序(メカニズム)による累積性は、弱くなります。著作物という形で記録された、良い知識や知恵が、世代を超えて伝わる量が減ります。

資源の枯渇などが引き起こす新たな状況に対し、そのうちに、人類は対処に失敗します。ケース1よりも高い割合で人類は失敗します。


もう一度、結論:

著作権保護期間が著作者の死後70年になると、著作物が生まれた背景と評価が添えられないため、良い著作物であっても世代を超えて伝わらなくなる。良い著作物が社会に共有されず、累積性が弱くなるため、人類の向上が遅くなり、人類は失敗しやすくなる。


補足:
本文章は、2007年に発表した「著作権保護期間 70年では次の一世代による情報の全面的な再利用可能化作業ができない」を元に、その後 7年間の状況変化(電子書籍の登場、電子化の容易化)を考慮し、また、累積性という視点を追加して、文章化したものです。

参考資料:
* 寿命中位数等生命表上の生存状況|厚生労働省。なお、本文章では、男女比を1:1として、概算しました。
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2013年 8月16日に亡くなられました、「青空文庫」の世話人、富田倫生氏の追悼シンポジウム「青空文庫の夢:著作権と文化の未来」が、2013年 9月25日に東京會舘(東京都千代田区)において、催されました。


富田倫生氏追悼シンポジウムが開催 | カレントアウェアネス・ポータル

青空文庫の活動を将来にわたって支援するための基金として創設: 本の未来基金

青空文庫 作家別作品リスト:富田 倫生

富田氏の訃報に際して 2013/ 8/17 13:07
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2013年 8月16日に亡くなられました、「青空文庫」の世話人、富田倫生氏の追悼シンポジウム「青空文庫の夢:著作権と文化の未来」が、2013年 9月25日に東京會舘(東京都千代田区)において、催されました。

「青空文庫」富田倫生 追悼記念シンポジウム生中継 - 2013/09/25 15:30開始 - ニコニコ生放送

後半のパネルディスカッションのメモを記します。表現に不正確なところがあるかもしれません:

パネラー (敬称略):
大久保ゆう(青空文庫)
津田大介(司会、ジャーナリスト)
長尾真(前国立国会図書館長、元京都大学総長)
萩野正昭(ボイジャー代表取締役)
平田オリザ(劇作家・演出家)
福井健策(弁護士・日本大学芸術学部客員教授)


大久保ゆう氏:
本が自由であること。

平田オリザ氏:
遺族に、パッケージ・媒体を拒否される場合がある。

萩野正昭氏:
商品は見栄えが重要であり、見栄えは大きな仕組み(Apple等)に左右される。「青空文庫」は、テキストファイルとXTHMLによる提供であり、見栄えは悪い。しかし、大きな仕組みに左右されることがない。

長尾真氏:
著作権を、許諾権から報酬請求権にすべきだ。
   → 福井健策氏: 著作権法はベルヌ条約に紐つけられ、ベルヌ条約は WTO に紐つけられている(そのような大きな体系である)。

作品を長く残すには、利用されること。

福井健策氏:
TPP交渉において、著作権期間延長問題は、著作権期間延長を求める米国にとって最難関課題である。著作権期間延長がされるか、されないかは、五分五分であり、キャスティングボートを握っている国の一つは間違いなく日本だ。国内の議論によって、TPPに伴う著作権期間延長は防げる。

大久保ゆう氏:
富田氏に「ベルヌ条約をひっくり返してほしい」と言われたことがある。


関連:
新時代の著作権は報酬請求権に――ベルヌ条約をひっくり返すという遺志 -INTERNET Watch
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