かつて、この季節に、「WISH」という アジャイルメディア・ネットワーク(AMN) が開催したネット新サービスのプレゼン大会が ありました。「WISH2009」、「WISH2010」、「WISH2011+」と、3回 開催されました。
このイベントは、AMN 代表取締役(当時)である徳力 基彦 さんが、岡田 有花 さんの梅田 望夫 さんへのインタビュー記事「日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編), Web、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く(後編) - ITmedia ニュース」をきっかけに、開催されたものです。
ネット新サービスのプレゼン大会が、どのようにして日本のWebを「残念」でなくするのでしょうか。
徳力さんの当時のブログ記事を、下記に「補足」として示します。そこには、
「日本のウェブサービスや製品を褒める機会」
「ウェブの未来を担うようになる可能性のあるサービスや端末を、参加者全員で発掘・共有・応援しようというイベント」
「ウェブを面白くしてくれる新しいサービスや製品が立ち上がるかどうかは、それを使っている私たちが、サービスの開発者や企業をどれだけ支えてあげられるか、支援してあげられるか、ということにかかってきていると言うこともできるのではないか」
と、あります。
徳力さんは、イベントという場を作って、日本のWebユーザに、まず行動をさせたのです。
(一方、2009年当時の私は同インタビュー記事を読んで、日本のWebユーザの、意思・行動様式を変化させることが必要だと考えました。これが現在の知的ネット社会推進本部に至ります。)
さらに徳力さんの思いとは異なるかも知れませんが、次のように考えました:
このイベントは、使える技術と不特定多数の人間の掛け算である
これは建設的であり、世の中を良くする揺さぶりである
ひとつには、これは意思を変える
なぜならば、
(1) 行動は意思を生むからです
行動と意思は、互いに互いを生みます。最近では、行動を始原、意思を結果と見なす考え方が広まりつつあります。
(2) 使える技術は意思を生むからです
・世に出された使える技術は、人に新たな視点を与えます。
・使える技術は、人を拡張します。人は、自身を拡張するものに強い影響を受けます。
・使える技術によって拡張された状態において、その中核たる人の心がその状態を活かそうとします
(3) 民が技術を使えることによって、民と統治機関が切磋琢磨できるからです
民の知性と、統治機関の知性は、堅牢な世界のために共生すべきであり、より効果的に共生状態であるために切磋琢磨すべきです。
民と統治機関が切磋琢磨するためには、統治機関だけでなく、民も技術を使える必要があります。
※ (1), (2) については、〈意思・思想〉・〈技術・機械・メディア〉・〈経済〉・〈行動〉の連関 にまとめています。
* * *
補足
「WISH」イベントの発起人であるAMN 代表取締役(当時)である徳力 基彦 さんの投稿を追います:
きっかけになった記事:
日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編) - ITmedia ニュース (2009/ 6/ 1)
Web、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く(後編) - ITmedia ニュース (2009/ 6/ 2)
[徳力] 日本のウェブは遅れているのではなく、急速に進みすぎたのではないかという仮説 (2009/ 6/ 9)
日本のウェブって、私たちができるはずのこととか、やるべきなのに見落としていることはたくさんあるのではないかと思う、今日この頃です。
[徳力] 日本のウェブの残念度を下げるために、私たちができそうな7つのこと+α (2009/ 6/12)
今回もう一つ思ったのは、日本のウェブサービスや製品を褒める機会がもっとあっても良いのではないかと言うこと。これについては、ちょっとイベント的なものから取り組んでみたいと思っています。
[徳力] 日本のウェブを盛り上げてくれそうなサービスや端末のプレゼンイベントをやってみませんか? (2009/ 6/17)
[シリコンバレーでは、] メディアの面でも、TechCrunchがサービスしたばかりの名もないサービスをピックアップしたりとか、ブログコミュニティ全体が、新規ウェブサービスをみんなでよってたかっていじってあげている印象があり、始まったばかりのサービスがスタートダッシュを切るのに良い環境がある気がします。
翻って日本の現状を考えると、...
そう言う機会を通じて、サービス開発者や企業にいろんな出会いがあったりすると、個人開発で面白いアイデアなんだけど、デザイナーの人が手伝えばもっと一気によくなるのに、とか、このサービスとこのサービスが組み合わさればもっと成功しやすくなるのに、とか、ひょっとしたら投資も決まってしまったり、とか、そういう可能性も見えてくるんじゃないかなぁと思います。
ウェブの未来の可能性を先行体験する「WISH2009」を開催|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN) (プレスリリース 2009/ 7/16)
WISH 2009とは、ウェブの未来を担うようになる可能性のあるサービスや端末を、参加者全員で発掘・共有・応援しようというイベントです。
[徳力] WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと (2009/ 8/25)
WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと
■本人が楽しいことが一番大事
■サービスはユーザーと一緒に考える時代
■ウェブに境界線なんてない
...
ウェブを面白くしてくれる新しいサービスや製品が立ち上がるかどうかは、それを使っている私たちが、サービスの開発者や企業をどれだけ支えてあげられるか、支援してあげられるか、ということにかかってきていると言うこともできるのではないかと思ったりします。
...
インターネットって、みんながつながっているので、みんながちょっとずつエネルギーを出し合ったり、アイデアを出したりすると、みんながちょっとずつ頭が良くなる。
...
メディア企業とネット企業の対立とか、外資系ネット企業に対する国内企業の牽制とか、政治的な対立はいろいろあるんだと思いますが、もっと同じウェブでつながるインターネットの利用者として協力しながらウェブを面白くしていく方法はあるんじゃないかなーと。
* * *
「WISH」イベントの記録
wishjapan(@wishjapan)さん | Twitter
● 始まり
[徳力] 日本のウェブを盛り上げてくれそうなサービスや端末のプレゼンイベントをやってみませんか?
ウェブの未来の可能性を先行体験する「WISH2009」を開催|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)
● WISH2009 2009/ 8/21
WISH2009 - YouTube
革新的なネットサービスを表彰 「WISH2009」は立ち見も出る盛況 - ITmedia ニュース
無窮 i ラボ Blog ネットの新サービスのプレゼン大会「WISH2009」が開催されます
アジャイルメディアネットワーク、東京でWISH 2009開催 ― スタートアップ14社がデモ | TechCrunch Japan
[徳力] WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと
WISH2009のプレゼンをどう作ったか? | IDEA*IDEA
WISH2009で伝えたかった2つのこと | IDEA*IDEA
WISH2009に行って盛大にスベってきた! - 941::blog
WISH2009に行ったよ☆? | 脳内会議
ウェブの未来を担う可能性を発掘・共有・応援するイベント「WISH2009」開催しました|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)
WISHプレゼンターのTwitterアカウントをご紹介します|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)
● WISH2010 2010/ 8/28
YouTube アジャイルメディア・ネットワーク内に、動画あり。
未来を担うネットサービスを発掘 「WISH2010」大賞は「パブー」 - ITmedia ニュース
@atene_gakudoログ 2010/08/28
● WISH2011+ 2011/ 9/ 7
YouTube アジャイルメディア・ネットワーク内に、動画あり。
[徳力] 今年のWISH2011は、日本のウェブサービスやアプリにとっての二段ロケットになることを目指していきたいと思います。
[徳力] WISH2011で考える、自分がウェブサービスを作れないからこそ、応援できることに感謝したいということ。
「WISH2011」大賞はソーシャル家計簿サービス「Zaim」 -INTERNET Watch Watch
3年目を迎えたウェブサービスの応援イベント、「WISH2011」開催。(市川 裕康) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
AMN主催イベント「WISH2011」の受賞結果をご報告いたします!|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)


・好奇心
・冷静さ
が、戦力だ。
国・社会・企業は、組織内のこれらを最大化するように経営される(環境・教育・技術を整備する)べきである。
・開達さ――知識・情報が広く行き渡っていること
知りすぎている人がいっぱいいると最強
・好奇心
「王の知性」が「民の知性」を制御できないように、 「好奇心 、多分ね」
・冷静さ
冷静さを失った時に それを取り戻す 心理的技術を、整備しておくべきだ。
関連: 「喧嘩するまで開けないこと」9年後に"結婚祝い"を開けた中身に世界中が感動 - Spotlight
https://t.co/x4xRP6p5tN で気づかされる、冷静な状態に誘導する(ここでは、普段(+α)の生活行動をさせる)ことの重要さ。これが、破綻を回避させる。 #シン・ゴジラ の #泉ちゃん の「まずは、君が落ち着け」である。 #泉修一
— 知的ネット社会チャンネル (@atene_gakudo) 2016年9月11日
冷静さを生む環境を整備しておくべきだ。安全・安心が必要だ。それには、長年実績がある複数種類の手段をもっている等、システムの堅牢性・信頼性が高いことが必要だ(工学的技術は、ここに貢献できる)。


「神の知性」: 社会的問題を解決する人工知能
「王の知性」: 統治機構
「民の知性」: 知能・知性を有しそれを意識的に発揮して行動する市民(:ONな市民)。その中には、例えば、知的ネット社会(:多くの人々がつながり、持ち寄られた知性と、それを支援する装置によって、社会が問題を解決する能力を高める場)がある。
これら 3つの知性が共生するためには、「王の知性」と「民の知性」が同一では、いけない。
さて、「王の知性」の一つである自由民主党は、マスコミ・ネットに関する統計データを活用する仕組みを既に持っている(鳩山由紀夫政権での下野時代から構築してきた)。(小口 日出彦=著「情報参謀」(講談社現代新書, 2016) に詳しい。)
上述のように、与党は、ネットの声を政策に反映する仕組みを持っている。これは、リアルにおける知識の高度化と、ネットにおける知識の高度化を結合するという、当初 私が構想していた知的ネット社会を、統治機構側から実現したものと言える。
「王の知性」は「民の知性」を観測している。ここで懸念されるのが、「民の知性」が「王の知性」に制御されることである。
それを避けるために:
コンテンツを漁るのではなく、キュレーション。 (あるアメリカ人のブロガーは「コンテンツが王だった時代は終わった。いまやキュレーションが王だ」と書きました。――佐々木 俊尚=著「キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる」(ちくま新書, 2011) p.241.)
タコツボではなく、セレンディプティ。(セレンディプティの反対語は、「タコツボ化」。――佐々木 俊尚=著「キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる」(ちくま新書, 2011) p.176.)
管理される前に、手を拡げよ。産・官・学の周りで動き回って、
・情報から知識を創れ (情報から知識への「翻訳」・解釈・ストーリー付け)。
・知識を高度化せよ (知識・情報の化学反応・加減乗除)。
・知識・情報の流通を加速させよ。
ここで、至言を思い出した:
「私は情報の並列化の果てに個を取り戻すためのひとつの可能性を見つけたわ。」...「 好奇心 、多分ね。」( 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX. 第26話)
そして、
World-changing things always start small. ── Bill Joy (梅田 望夫 : ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く! (文藝春秋, 2008))
初出:
Facebook 2016/ 8/22


堅牢性を得る方法として、共生がある。
今、新たな知性が胎動しつつある。
それは、ディープラーニングを代表とするボトムアップ型人工知能である。
NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」(2016/5/15放送)において、イギリスの人工知能学者デミス・ハサビスは、こう語った: 「私が目指すのは、何でもできる「究極の人工知能」です。実現すれば科学を急速に進歩させ、社会のあらゆる問題を解決できるでしょう」。
私は、これを聞いた時、『ヘヴィーオブジェクト』の「パーフェクト・ブラウジング」を想起した。
社会的問題を解決する「パーフェクト・ブラウジング」のための人工知能。これを、「神の知性」と呼ぼう。
「神の知性」と共生すべきなのが、「王の知性」と「民の知性」だ。
「王の知性」とは、統治機構である。
「民の知性」とは、知能・知性を有しそれを意識的に発揮して行動する市民(:ONな市民)であり、その中には、例えば、知的ネット社会(:多くの人々がつながり、持ち寄られた知性と、それを支援する装置によって、社会が問題を解決する能力を高める場)があります。
これらは、堅牢な世界のために共生すべきだ。「三人寄れば、文殊の知恵」。それぞれは孤立してはならない。孤立は、性格の破綻を生む。より効果的に共生状態であるために、切磋琢磨すべきだ。
「神の知性」が生まれたときに、「王の知性」と「民の知性」は、「神の知性」を孤立させず、「神の知性」に、共生するにたる存在と認識させなければならない。
初出:
Facebook 2016/ 8/22


ビッグデータは、欠測ある世界そのものである。そこから人工知能が知識を生み出すとき、知識すなわち世界の解釈は、欠測のあり方により、複数出力される。
欠測が減れば、世界の解釈の数は減少するだろう。しかし、唯一のものにはならないのだろう。
世界の解釈が複数あり、その中に我々の思考の範囲を超える解釈があることを、人工知能により顕らかに示されたヒト・人間・社会・人類は、如何なる反応を示すのだろう。
ファジーさと秩序を両立できるのだろうか。代替案が恵みをもたらすのだろうか。疑心暗鬼の度合いが増え、修正主義が勢力を増やし、不安定が恵みを消耗させるのだろうか。
初出:
Facebook 2016/ 8/ 6

